間の構造ー虚空をよみとるー
2月1日〜16日 小川敦生,中島法晃,安原成美
17日〜3月5日 尾形純,鮫島大輔,澤本幸子
場所:岩崎ミュージアム・ギャラリー
住所:横浜市中区山手町254
tel:045-623-2111
http://www.iwasaki.ac.jp/museum
https://theta360.com/s/b6thMflJAgqjHUZgfQR7PdEQ8
私は2011年頃から、和紙を使用した制作を始めた。岐阜の美濃和紙との出会いが影響している。
和紙はあたたかみがあり、柔らかく、脆さを内包しつつも、私にとっては力強さのようなものを感じ制作していた。
そして、月日とともに作品が風化していく様子が、私の死生観を満たしてくれていた。
2015年夏に渡仏し、ポートフォリオを片手に画廊を巡った。
そこで和紙作品画像をみた何軒かの画廊主人から、「保存はどうするの?ガラスケースに入れて展示しなさい。」という言葉を投げかけられた。
「作品を買う」ということは、「作品を保存する」ということなのかもしれない。
たしかに、私の作品が持つ「風化」という刹那性と、「保存」の概念は対極にあるように思う。
一方、油絵の具で描かれた作品は、劣化しつつも何百年も先の人々を喜ばせることができる。
初めてモナ・リザを観た時は、画面に塗られたその色彩の美しさに感動した。
今回、初めての試みとして、和紙に油絵の具を染み込ませたものを素材として造形した。
まるで生きながら自らでその歩みを止めてしまうような、そんな感覚に陥りながら、それでもこれらの作品がこの先どのように変化していくかが楽しみでもある。
芸術家としての行き詰まりを感じていた頃、「研究」という言葉に出会った。そして、オートエスノグラフィーという手法を知った。この手法との出会いは、美術作品制作において、初めて使用する素材を試す時と似ていた。
私は2014年に名古屋大学大学院に入学し、今年1月に修士論文を提出した。
この論文は、美術業界で成功した有名芸術家が書いたものではなく、決して有名ではない地方の芸術家が、現在までの自己について記述したことに意義があると考えている。芸術家である私は、オートエスノグラフィーという人類学の手法を用いて自己を分析し、記述したことで、芸術家として「書く」という行為の困難さを知るとともに、書くことでそれまで言語化されなかった多くの情報を得る機会となった。さらに、人間の根源にある普遍的な本能のひとつとして、美術表現の可能性に新たな興味をもつことになった。今後の研究において私は、芸術活動をする人間としての本能の根源を探るために、自らの芸術活動を通したオートエスノグラフィーを継続していきたいと考えている。
自己の制作概念を理論化し、言葉によって説明することが求められている現代美術業界において、現在の自分の立ち位置を理解しているということは、芸術家にとって非常に大事なことであり、それだけでも自分にとって意義があるものとなった。
「記述すること」を、日本で活動する多くの無名芸術家もしくは美術大学生たちに推薦したい。自己を客体化し、様々な文脈に基づいて分析、考察することで、自分の考えを整理することができるし、作品に対して明確な根拠を示すことが可能になるからである。一方で、芸術家が書く論文をアカデミックなものへ昇華させるためには相当の論理的思考を必要とする。その思考は、芸術作品を制作するものとは異質なものであるということを追記したい。しかし、芸術と科学は通ずるものがあると漠然とであるが感じている。
本論文は将来的に書籍化を意識して書いたものであり、現代を生きる芸術家のありのままの実態を伝えたいという思いから始まった。これを読むことで、当たり前ではあるが中島法晃の美術作品を鑑賞する際に深い理解の手助けになるであろう。また、社会一般においては、まだ世には出ていないが、全国各地で自己を追求しながら活動しているであろう、芸術家と重ね合わせて読むことで、多様な形で存在する芸術家に目を向けるひとつのきっかけとなれば幸いである。
個展やります。六本木!
中島法晃「芸術家のオートエスノグラフィー」展
・会期
2月1日-13日 ※日曜、祝日休廊(お間違えのないようよろしくお願いします)
11時-19時(最終日は17時まで)
・会場
Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi
東京都港区六本木7-8-9深作眼科ビル1F・B1
http://www.f-e-i.jp/exhibition/1895/
大学を卒業して岐阜に帰郷した約12年前、「次東京に来る時は招待作家として個展をやる時だ。」と決意していたことが、遠い昔のように思えるし、最近のようにも思える。鏡を見ると、やっぱり昔のことだと気づく。
修士論文にも書いたが、岐阜での作家活動の展開は非常に厳しく、特別な才能があるわけではない自分にとって、ここまで継続してこれたことは奇跡的なことだと思っている。両親に感謝したい。
地方を拠点に活動する中で多くの葛藤と向き合いながらも、信じられないぐらいたくさんの仲間ができて、地域の人たちと美術を通して関わることができて、今では様々な場所で絆を感じることができている。
バリバリ活躍している大学の同期や後輩たちより少し遠回りをしてきたかもしれないけど、今回初めて東京で個展を開催できることになりましたよ。ありがとうございます。
論文執筆のため、制作時間が限られてしまったという悔しさもあるけど、搬入日ギリギリまで集中して制作します。
展示作品はすべて、先日名古屋大学に提出した修士論文を印刷した和紙を使用した彫刻作品になります。
多くの人にお越しいただけることを願っています。
よろしくお願いします!
名古屋のガレリアフィナルテでの個展が終了しました。
ご来場いただきありがとうございました。
「私」とは.
「私」にとっての「他者」とは,彼らにとっての「私」とは誰なのか.
ネットワーク技術が離れたひとびとの心を近くする.
一方で,ひととひととの直接のふれあいが確かな支えになることを,私たちはあの震災で知った.
被災地の,かつては街だった海辺で,ひとつのぬいぐるみが目にとまった.
それは誰かの記憶であり,そこに存在することでひとつの記録でもあった.
私は以降,「痕跡」をテーマに制作をするようになる.
本個展の作品は,私の身近な他者をモデルにしている.
彼ら自身の選んだ色で,彼らの姿を,彼らのことばを紙の上に残した.
他者の痕跡を紙に焼きつける作業を通してたちあがった私自身の姿は立体作品になった.
今まで特定のモチーフを定めずに表現してきた私にとって,目の前のリアルな存在をモチーフにすることは初めてのことであり,
墨の濃淡ではなく色を用いた表現であることもまた,初めての試みである.
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