個展のタイトルを「生生流転」としたのは、これまで無常観を表現してきた自分にとっての一つの着地点といえる言葉だと思ったからだ。世の中には、変わらないものは何一つないといわれていて、それは形あるものも、無形の・・・人の気持ちや感情にもいえることだとされている。あらゆるものは絶えず移ろい変化していく。それはその通り、間違いないと思う一方で絶対に変わらない、変わってほしくないものへの願いや憧れは消えない。消えないからこそ、やはりあらゆるものが変化、進化、刷新していくのだろう。
今回、個展のメインモチーフを林檎にした。林檎は、古くから世界中の芸術家にとってモチーフのアイドル的存在であり、芸術を志す者は誰もが一度は描いたり作ったりした経験があるだろう。世界中の芸術家は、林檎を通して何かを見つめ、何かを表現してきた。それは哲学であり宗教であり現象学であり二元論であり唯物論であり認識論であり・・・、「美術作品に観る林檎論」だけで何時間も議論ができる。
では、はたして今の自分は林檎に何を投影することができるだろうかと考えた。林檎を通して何を表現することができるだろうか。その答えが今回の作品群であり、結果として、自分の一つの着地点、そして再スタート地点となったように思う。