保見アートプロジェクト

3月チラシ日web

今年の6月から保見団地に通うようになり8ヶ月経ちます。県営団地を歩くと、すれ違う人は皆外国人。日本にこんな場所があるんだということをこれまで知りませんでした。

建物の落書きをアートで生まれ変わらせたいという住民や団地で日本語を教えるNPOや愛知県の願いのもと、アーティスト達が集まりました。
賛同したアーティスト達と落書きの壁がある棟に視察に訪れた時、大きなキャンバスに何を描こうかとそれぞれがイメージしていました。
その時は皆ワクワクというか、純粋に、アーティストとしてパブリックな場所に絵を描くことへの楽しみがあったと思います。

でも、愛知県や豊田市、住民らとの会議を重ねるたびに絵を描くまでの道のりの険しさを感じるようになりました。
「生活習慣の違いから、外国人住民のトラブルが多発している。警察沙汰になることもしょっちゅうある。」という住民の声や、団地に出入りしている業者の人からは、「保見に行くのは怖い。」とか、「落書きを消してアーティストが絵を描いても結局また落書きされるから意味がない」など。
さらに、現状を変えたいと考えているのが日本人ばかりという現実。
同じ団地に住んでいながら、外国人と日本人の関わりがあまりないということも知りました。

法改正により、今後日本では外国人労働者が更に増えていくことになります。この保見団地が抱えていることは、これからの日本の様々な場所での課題になっていくことだと思います。

県や市、自治区の人達と何度も会議を重ねましたが結局、「何をしても現状は変わらないのでは。」つまり、「予算の出所がない。」ということでした。

私達アーティストは諦めませんでした。
壁画制作をするにあたって、ここで生活している人たちのことを知りたいと考え、住民と交流するためのワークショップを企画することにしました。
そして、様々な人の想いを集結させ、クラウドファンディングで支援を募りながら活動を進めていくことに決めました。そして、ついに11月3日にプロジェクトがスタートしました。

これまで8回のワークショップをおこないました。不安の中のスタートでしたが、毎回大盛況です。
保見に住むブラジル人もペルー人も、日本人もアートを通してコミュニケーションしています。アートに国籍は関係ないということを実感しています。
3月29日の壁画完成まで、今後もワークショップを継続していきます。

これまで保見団地の中で、あまりされてなかった国籍を超えた交流を、アートを通して図っていきます。
このプロジェクトを、将来の日本の「多文化共生」のひとつのモデルにしていきたいという思いが芽生えています。

12月に始めたクラウドファンディングは、皆様からご支援をいただいたおかげで保見アートプロジェクトのクラウドファンディングの目標金額を達成することができました。
誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。
https://readyfor.jp/projects/29824

これまでのプロジェクトを通した保見との関わりの中で感じたことは、外国籍の住民は現状の生活を精一杯生きてるということです。教育にも一般的な生活に関しても本当にいろんな問題があり、様々な団体が問題解決のために力を尽くしている様子を見聞きしてきました。

そんな中、アートは果たして問題解決力があるのだろうかと考えます。
このプロジェクトでは、ワークショップやライブペイントを通してたくさんの人を喜ばせてきたと思います。参加者の中には、頭から絵の具をかぶって喜んでる子どもや、ワークショップでのものづくり経験をきっかけに、もしかしたら将来作家になるかもしれないという子もいました。ライブペイントでの絵を気に入った社長さんから個別に絵の注文があるということもありました。

回数を重ねるたびに、最初は腰が重かった自治区の人達もどんどん協力的になってきて、一緒になって盛り上げてくれるようになりました。
成果を具体的な数字として見せるのは難しいけど、プロジェクトの最初のゴールは、完成した憩いの場で住民が笑顔で遊んだりしゃべったりしてる姿があり、たくさんの人のための場所であり続ける場所をアートで作ることです。
日本人も外国人も、憩いの場のアート空間の中で互いに語り合ってほしいと願います。これはプロジェクトに関わる全員共通の願いだと思います。